巻頭言 奥野 恒久

「電電公社・NTT民営化直後の海外技術協力」の発刊に寄せて

日本電信電話株式会社
取締役グローバルビジネス推進室長
奥野 恒久

WS000177 ICT海外ボランティア会の皆さま、「電電公社・NTT民営化直後の海外技術協力」の発刊を心からお祝い申し上げます。
貴会はNTTのOBでシニア海外ボランティアを経験された方々が中心となり、自らの体験を基に、技術やノウハウをお持ちのOBの方々にボランティア活動を奨め、同時に途上国の発展に寄与する主旨と伺っております。私はこの主旨に賛同いたしますと共に、貴会が益々発展されるよう祈念しております。

 NTTは、2015年4月で民営化30周年を迎えましたが、この30年間、情報通信の世界では目覚しい技術革新が進み、人々の生活やビジネスも大きく様変わりしました。インターネットはより快適で便利なインフラに向かって進化し続けていますし、今や携帯電話、特にスマートフォンは単なる通話の道具ではなく、日常生活やビジネスになくてはならないものになっています。

 こうした変化の中で、NTTグループの収益構造は大きく変化してきました。1985年当時、営業収益のほとんどを占めていた固定電話収入は、現在では売上全体の約13%程度まで減少してきました。その代わりに、収益の中心とするべく注力してきたのが、ブロードバンドを基盤としたIP系サービスやソリューションサービスです。コンシューマー向けでは、最先端のブロードバンドサービスの提供によって便利で快適なライフスタイルをご提案するとともに、ビジネス向けでは、高度なシステムインテグレーション技術をわれわれの強みであるネットワークに組み合わせ、お客さまのビジネス上の課題解決や効率化のお手伝いをしてきました。このように、技術の進化やそれぞれのお客さまのニーズの変化を先取りした付加価値の高いサービスを提供することで新たな収益源を伸ばしてきました。

 一方、環境の変化はわれわれ通信事業者の立場そのものも大きく変えてきました。かつて通信事業者は、インフラとサービスを一体的に提供していましたが、今ではFacebookやYouTubeといったOTT(Over The Top)事業者をはじめ多種多様なプレイヤーが登場し、それぞれが強みを活かしたサービスをわれわれのインフラの上で提供しています。もはや通信事業者自らがメインプレイヤーとしてすべてのサービスを自前で揃えて提供する時代ではなく、数多くのプレイヤーの中の1プレイヤーとして、自らを捉えなくてはならない時代になってきたと考えています。

 2012年11月に公表した中期経営戦略「新たなステージをめざして」では、単なる通信事業者から脱却し、「お客さまにとって価値ある、選ばれ続けるパートナー」となり、事業構造の変革を行っていくというメッセージを内外に発しました。そしてグローバル・クラウドを事業の基盤に捉えて成長のエンジンとすることと、国内で苦戦が続いていたアクセス系のネットワークサービスの大幅な効率化を図り競争力を強化することを二つの大きな柱と定め、変革を進めています。グローバル・クラウドサービスの拡大では、まずは挑戦者として収益を伸ばすことに主眼を置き、オーガニック成長に加え、M&Aを通じて、事業の「拡がり(フットプリント及び領域の拡大)」と「奥行き(提供能力)」の強化に向けて取り組んできました。

 現在われわれは、全世界の90ヵ国近くに拠点を展開し、約200の国と地域にネットワークサービスを提供しており、データセンターの総床面積は世界トップレベルとなっています。また、クラウドサービスに関連するアプリケーションからデータセンター、ネットワークまで幅広い分野で高いサービス提供能力を有しており、お客さまがクラウドに移行する際のコンサルティングから保守まで、ワンストップで対応できる総合プレイヤーとなっています。その結果、2015年3月期の海外売上高は150億ドルまでに拡大し、連結売上高の14%を超える規模となっています。地域別に見ると欧州・中東・アフリカ、米州、アジアパシフィックの各地域でバランスよく実績を積み重ねています。特に新興国におけるビジネスの展開に当たっては、これまでの電電公社・NTTの技術協力活動において、諸先輩方が築き上げてきたパイプを有効に活用させていただいております。新興国にNTTシンパが多いのは先輩方のご尽力の賜物であり、これまでに積み重ねてこられた歴史はとても大切なものだと日々痛感しているところです。

 今後NTTグループは、グローバル事業の収益拡大を継続しつつ、利益創出を図るフェーズに移行します。この目標に向けて、グループ横断的なワーキング・グループを結成するなど、社員は世界各地で様々な努力をしているところです。途上国の政府機関などに直に入り、現地の職員の方々と仕事をされた先輩方から、後輩達に激励や率直なアドバイスを頂ければ、大変有難いと思っております。

 最後になりますが、ICT 海外ボランティア会の今後益々のご発展をご祈念するとともに、会員の皆様のご健勝とご活躍を心より願いご挨拶とさせて頂きます。

 

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