「日本発」の推進に向けてBHNの活動と貴会の発展

BHNテレコム支援会議会長
NTT副社長

本会サポーター
桑原守二 

ICT海外ボランティア会会報に巻頭言を述べる機会を与えていただき、まことに光栄に存じます。

kuwahara本会の前身であるNTTOBシニア海外ボランティア会は、2008821日、北京オリンピックにおいて日本女子ソフトボールチームが金メダルを獲得した良き日に発足したと伺いました。発足にあたっては、現在も顧問をされている石井孝さん、事務局長をされている加藤隆さんのお二人が多大なご努力をされたことを私も承知しております。私はお二方に50年以上に亘りご厚誼を頂いております。会の現在のご隆盛に対し心よりお慶びを申し上げる次第です。

NTTOBシニア海外ボランティア会は、2周年となる20108月、さらに大きく発展させることを期してICT海外ボランティア会と名称を変更されました。これには大きく二つの意味が込められていることを感じます。

第一は、会員の構成はもちろん、会が支援する対象をNTTOBに限らず、広くICTに関連する方々に拡大したことです。NTT以外の企業のOBでもシニアボランティアに参加されておられる方がたくさん居られます。当会がこうした方々に対して幅広く支援活動をされることは、まことに有意義なことだと思います。

第二は、シニアボランティアに限らず青年海外協力隊(JOCV)の現役およびOBにまで範囲を広げられたことです。これらの方々の中から、いずれシニアボランティアに応募される方がたくさん出られることでしょう。また、本会の会員にNTTICT関連企業の現役が含まれていることにも驚きを禁じ得ませんでした。

ところで、私が会長を務めさせて頂いているBHNテレコム支援協議会は今年で20周年になります。チェルノブイリ原発事故被災者のデータを送るマイクロ波回線の建設から始まり、その後、ラオス、アフガニスタンなどの僻地医療機関への無線網の建設、遠隔医療診断などの人道支援活動、地震・津波・サイクロン等大規模災害発生時や紛争による難民救済などの緊急支援活動を行って参りました。また、1998年からはアジア各国の情報通信関係者の人材研修プログラムを開始し、これまでに13か国、100名を超える研修生を送り出しております。

このように、昨年までは発展地上国を対象とする海外への支援活動が主体でありましたが、昨年311日の東日本大震災に際してはその悲惨な状況を看過できず、活動を海外支援のみに限定しないこととし、その後は大震災被災地に向けての支援活動も続けております。すなわち、岩手県釜石市等沿岸被災地42町の避難所等に対するインターネット設備の構築およびラジオ・スピーカー等の配布、福島原発事故により計画的避難を余儀なくされた飯館村役場と村民の避難先を結ぶ情報通信システムの提供、東北3県の臨時災害放送局の建設、宮城県石巻市および周辺市町被災者のためのIT活用による生活支援などです。今後、国による被災地復興支援が本格化するに従って、BHNの活動は再び海外が主力になると考えております。

BHNの会長として、私は3代目となります。初代は浅原巌人さん(故人)、2代目は信澤健夫さん(現名誉顧問)です。お二人とも崇高な信念をもって発展途上国に対する支援活動を行ってこられ、私はその姿に深い尊敬の念を覚えずには居られませんでした。

浅原さんはクリスチャンのご家族に生まれ、お育ちになって、「愛」、「奉仕」等ということに感受性の高い方でした。ITUから1984年に出されたミッシングリンクというレポートが「21世紀初頭には世界中のすべての村落で電話が使えるようにしよう」という呼び掛けに強く同調され、テレコムに特化したNGOの設立に尽力されたといいます。

また信澤さんは常々「恩返しの気持ちが我々の活動の原点である」と言われていました。「日本が戦後の廃墟の中から立ち上がり、平和を維持し、経済的にも繁栄を謳歌していられるのは世界の多くの国々や人々の支援のおかげである。我々はその御恩を今、世界の貧しい国にむかってお返しするのだ」という強い思いがありました。

お二人と比較して、私の支援活動の根底には、かなり打算的なものがあるように反省しております。

私には発展途上国において日本のプレゼンスを少しでも高めたいという気持ちがあります。この10数年、NTTをはじめICT関連メーカー、工事会社、商事会社などが国内に閉じこもりがちとなり、海外における往年の活躍ぶりが消えてしまいました。私はそれが残念でならず、僅かな仕事であっても「日本発」という名前を残したいという思いがあるのです。

ICT海外ボランティア会に所属し、あるいは会の運営を応援されている方々はもっと純粋に、派遣された発展途上国のお役に立ちたいと思いつつ行動し、現に行動されていることと信じております。日本人の中で、そのような気持で居られる皆様は私たちの誇りであります。

懸念していることが一点あります。NTTからの青年海外協力隊員の数が減少していることです。私が関東総支社長をしていた昭和61年~63年には毎年30名以上の社員が協力隊員として派遣されておりました。特に関東と九州からの応募者が多かったと記憶しております。それが最近では5名程度に過ぎないと伺いました。若い社員の方々がもっと積極的に応募していただききたいし、NTTおよびNTTグループ会社側もそのように社員を勇気付けて頂きたいと念じております。

明治時代の日本人は、勇気とともに謙譲の美徳を持ち、礼儀の正しさで日本を訪れた外国人を魅了いたしました。戦後の日本人はその多くを失ったと言われますが、外国に住んでみると、日本は依然として素晴らしい国であることが良く分かります。海外でボランティア活動をされた皆様は、そのような日本人の長所を十分に発揮し、派遣国の人々が日本に対して好感を持って下さることに大いに貢献されたこと思います。皆様方が今後もぜひご健康でご活躍されることを祈りつつ、巻頭言とさせて頂きます。

 

 

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