特別顧問就任のご挨拶

2009年4月 損保ジャパン総研理事長 宮村 智

皆様、こんにちは。私は此の度、NTT OB SV会の特別顧問を務めさせていただくことになりました宮村です。私は元は大蔵省(現在の財務省)出身ですが、NTT持株会社で常務取締役第4部門長(現在の財務部
門長)として勤務した後、2004年7月に駐ケニア大使に任命され、3年間、ケニアの首都ナイロビに駐在しましmiyamuraた。この大使勤務の期間にSVを含めた多くのボランティアの活動を視察して、JICAによるボランティア派遣はケニアの国造りに貢献するだけでなく、ケニア人の親日性を高め、ボランティア個々人に貴重な機会を提供する一石三鳥ともいえる有意義な事業であると感じました。以下ではこうしたJICAボランティアの意義について述べた上で、NTT OBの方々にSVへの応募をお勧めして、特別顧問就任のご挨拶に代えたいと存じます。
 

 JICAボランティアは政府開発援助(ODA)の一形態である技術協力の一つの事業です。技術協力というのは日本の技術や知識を開発途上国に伝えて相手国の経済社会の開発を支援する援助形態であり、技術や知識の伝え方は基本的に人を通じるやり方が採られているので、技術協力は必然的に日本と途上国の人々との交流を伴います。JICAボランティアは原則として2年間、相手国の公的機関や工事現場等に入って相手国の人々と毎日のように一緒に働きます。このため、その人的交流の程度は大勢を相手にする講義方式による技術協力などと比べると、遥かに深くて濃いものになります。この結果、JICAボランティアは日常的にそれぞれの職場で相手国の人々に自らの技術や知識・経験を伝えるだけでなく、自然に日本人代表として仕事や人生に対する態度とか考え方などを示すことになります。 

 私は着任して直ぐにケニア人がとても親日的であると知って嬉しくなりましたが、その後に多くのケニア人とお付合いして、JICAボランティアのケニアにおける長年の活動が親日性を高めるのに一役買っていると感じました。1965年から現在までに1300名以上のJICAボランティアがケニアに派遣されていますが、彼らは同じ高さの目線でケニア人の中に入って、自らの技術や知識・経験を伝えるとともに、自然体で日本人の規律正しさや細かな気配りなどを見せてきました。そうしたボランティア一人一人による長年の活動の積み重ねがケニアの国造りに貢献する一方で、ケニア人の間に日本や日本人に対する信頼や尊敬も育んできているのです。大使の最も重要な任務は日本と管轄国との友好関係の増進ですが、沢山のJICAボランティアが毎日のように一般国民レベルで親日感情を育て、日本とケニアの友好関係を促進する役割も果たしてくれていると分かり、誠に心強く感じた次第です。 

 次に、JICAボランティア個々人にとっての意義について述べると、私がケニアでお会いしたSVの方々は例外なく生き生きとして充実感を持ってボランティア生活を送られており、SVは退職後もチャレンジングで生きがい感じられる貴重な機会を提供する事業でもあると感じました。SVの言葉を具体的に紹介すれば、ある人は退職後、残りの人生をどう過ごすべきか悩んでいたが、電車の吊り革広告に閃きを感じてSVに応募してケニアに来た、ケニアでやる気や情熱を取り戻せて誠に嬉しかった、と言っていました。また、別のSVは自分を尊敬して大事にしてくれるケニア人に囲まれて、一所懸命に学ぼうとするケニアの若い人々に教えることは本当に楽しいことです、と言っていました。私はかつて「人は他人から感謝されるボランティア活動のような善行に励んでいると、エンドルフィンという人を幸せな気分にする脳内ホルモンの分泌が盛んになり、その人は若返って長生きする」という話を聞いたことがあります。ケニアでお会いしたSVの方々は正にこのエンドルフィン効果で元気に充実した毎日を送られているという感じがしました。 

 ケニアでJICAボランティアの大きな意義を知った私は、NTT OBのように途上国の経済発展に不可欠な電気通信やコンピュータなどの分野の専門的な技術・知識・経験をきちんと身に付け、しっかりした人生観や考え方をお持ちの方々にできるだけSVに応募していただきたいと願っています。また、そうされることはNTT OBの皆様にとっても、第二、第三の人生において、新たに生きがいを見出すきっかけにもなるであろうと信じています。

  そう言われても、SVは外国、しかも開発途上国に住むのだから、ハードルは極めて高いと感じる方が多いと思います。言葉、治安、医療、生活環境などが心配で、特に海外勤務経験のない方はSVに興味はあっても、応募する気になれないかもしれません。しかしながら、SVの応募に必要なのは基本的には開発途上国が支援を求めている分野の専門的な技術や知識・経験だけです。言葉はできれば望ましいでしょうが、JICAによる65日間泊り込みの赴任前研修や任国での特訓で身に付けられます。安全・健康を含めた生活については、赴任前研修の中で、任国事情や安全対策に関する講座を設けて現地の状況について説明があるし、任国に赴任後は、JICAのボランティア調整員等が現地で健康管理・安全対策についてキメ細かに説明や対応をしてくれます。また、SVは配偶者同伴で赴任することも可能です。一歩踏み出して、新しい世界にチャレンジする勇気さえあれば、SVのハードルを乗り越えることはそんなに難しいことではないと思います。

  最後に、自らの経験も踏まえて、途上国で充実して楽しい生活を送る秘訣を述べれば、①やりがいを持って仕事に取組むこと(これはどこにいても同じでしょうが)に加えて、②旺盛な好奇心を持ってその国や国民を知り好きになること、③任国で仕事や生活上の多少の不便・不都合・不愉快があっても、それらを貴重な異文化体験と見なし、工夫して克服するといった柔軟で寛大な心構えをもつこと、が大切であると思います。このHPのSV体験記を拝見すると、新鮮な好奇心と感受性で任国事情を体験・観察され、おおらかで好意的な気持ちで日本と違った任国の風俗・慣行を受入れつつ、充実して楽しいSV生活を送られている方々が多いようで、正に我が意を得た気がしています。そう、SVは退職後のボランティアなのだから、そもそも楽しくなくては話にならないですよね。今後、本会がNTT OBでSVに応募しょうとする人やSVとして現に活躍中の人を適切に支援するとともに、SVのやりがいや楽しさを広く周知することを通じて、NTT OB出身のSVを増加させ、益々発展されるように心から祈念して、私の挨拶を終えることにいたします。(了)

 ご挨拶にありますように、宮村 智氏は2004年より駐ケニア日本国大使をつとめられ、「貧しくとも魅力あふれる・アフリカの大地から」(毎日新聞社)を著されました。その中の「ケニアを助ける日本」の章において「現地社会に入って活躍するJICAボランティア」に触れられ、同国でのSVの活躍振りを具体的に紹介するなど、ボランティア活動に深い造詣をお持ちです。(加藤幹事)

 

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