ICT海外ボランティア会への期待

日比谷同友会会長

元NTTコミュニケーションズ代表取締役社長

鈴木 正誠
 

 働く場を考えるにあたって多くの場合は会社選びということになろうが、これからの社会はどうNTTcom-suzukiなっていくのか、自分に何ができるか、貢献できる世界はどこにあるか、を判断していかねばならない。同時に、これらを従来と異なった視点から機会を探ることが大切である。まず、働くところを日本に限定することはない。多くの企業が縮小する国内市場に限界を感じて海外進出が生き残りのカギとしているし、市場のグローバル化を受けて世界中の企業が意欲と性能のある者を求めている。新しいビジネスモデルが既存の企業の枠外で若者の感性と技術によって創出されるケースも多い。SNS,ゲームソフト、新アプリなどインターネットにかかわる事業は特にそうだ。他にも斬新な問題意識を持ったNPOやボランティア活動の中からも明日の事業の芽を感じさせるものがある。 

これは先日大学関係者に向けた教育と就職に関する私の提言の一部である。これを書いていて学生に語りかけるつもりだったが、リタィアーして第二の人生を歩もうとしている熟年、高年層も同じなのではないかと感じた。社会に巣立ちをしようとしている若者とひと仕事を終えてさらに新しい生きがいの場を求めようとする中高年との間に本質的に異なるものは皆が考えるほど大きくはないように思う。

 反論が予想される。体力、気力、夢、期待、責任感、探究心等々あれをとってもこれをとっても、高齢になるにつれて衰えてくるではないか。本当にそうだろうか。私の考えは、若者は意欲と生気に満ちた若者に囲まれ(中にはそうでないものもいるが)学校、社会、家庭から適度のストレスを与えられている。リタィアーするとその人を取り巻く人間の数が減り、世の中とのかかわり方も一変し新しいつながりを作るのは容易でない。ここに衰えの原因がある。衰えるように仕向けられているわけで、なおさら悪いことにはこの被害者が他人を衰えさせる加害者に転じるという伝染メカニズムとして広がっている。 

仲間の存在が活力維持の第一条件だと思う。今やインターネット上でのSNSが大盛況で趣味の会、商品の宣伝から専門家の人脈形成、政治体制の変革運動まで人と人とを結びつけ影響を与え協力しあっている。これは既に社会を変えるエンジンである。やがて高齢者が参加しリードするSNSが広がっていくことを期待しているが、問題はツールそれ自体よりも、その背景にある仲間作りによって得られるものが非常に大きいことの理解とそれを実行する情熱を持つことである。このような活動に日比谷同友会として一歩踏み出せないかと考えて、会員がこの指とまれ方式であることに共鳴した人たちが交流の場をもうけることを何とかサポートしていくことはできないかといろいろ工夫している。結果はこれからである。

 この中で私はICT海外ボランティア会の組織、活動そしてメンバーの高い参加意識に注目している。もともと電電公社からNTTの初期にかけて海外協力を柱として、東南アジア、アラブ諸国、中南米と広く電気通信インフラの建設に多くの専門家が携わって、目覚ましい成果を上げ現地の政府や国民から感謝されてきた。その後これらの多くの国は経済力を飛躍的に成長させると同時に通信の目覚ましい技術改革により自力で通信システムを築く能力をつけてきたし世界の民間企業が投資活動の対象として進出するようになって大きく様変わりした。しかし、今や世界の人口は70億人に達し勢いは止まらないし、経済成長から取り残されている国や地域はむしろ拡大している。助けと援助を求める声は我々のところに届かないところで以前より大きくなっているはずである。これに応えようと経験のある専門技術者の方々が使命感を奮い立たせて新しい地域に新しい技術で貢献しているのがICT海外ボランティア会であると理解している。少なくともこの意気込みを共有する集団の熱気が伝染性を持ったものであればなお期待が持てる。 

一つのビジネスモデルは時代とともに退化していくが、新しい時代は新しいニーズと新しい働きを求めてくる。若者や学生に勧めることは同時代に生きるシニア層にも当てはまるはずである。新しい可能性を追求して止まないこの会が模範となることを心から願いたい。

 

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